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         窯焚き

 

陶器は一般に低火度と高火度に分類できます。低火度の陶器では楽焼があります。赤楽は摂氏900度、黒楽は摂氏1150度です。高火度の陶器は摂氏1250度で、ある程度まで素地土を焼き締めると同時に高温で溶ける硬質の釉薬で覆います。

火の色は摂氏790度で暗赤色、摂氏900度で赤色、摂氏1080度でだいだい色、摂氏1200度で黄色、摂氏1300度で白色、そして青っぽく、眩しい白色になります。

江戸時代は経験上、火の色を見て温度を判断してきました。現代の人は火の色を見て温度を判断する訓練を受けていないので火の温度を判断するのにゼーゲル錐の8番を使います。ゼーゲル錐の8番は1250度になると溶けてペタッと倒れるので温度を判断する目安になります。焚き窯の各部により温度が違うので数か所にゼーゲル錐を置き総合的に判断する必要があります。窯焚きは薪窯でおよそ24時間かかります。
 現在では自動制御装置と言う便利な物が開発され温度上昇をコントロールすることができ、窯内温度もわかります。

摂氏1100度までは簡単に温度は上がります。摂氏1100度から1250度にするのに10時間以上かかります。摂氏1150度が陶器の出来栄えに面白い影響を与えますので1150度で数時間の温度保持を試みて下さい。

昔は釜とカマドと薪でご飯を炊いていました。釜でご飯を炊くことは大変な経験が必要でした。現代ではスイッチ1つでご飯が炊けます。陶芸窯も電気炊飯器と同じレベルで誰でも説明文を読みながら間違いなく窯焚きが出来るようになっています。
 やきものは炎の窯でなければ味わい深いものは出来ないという人もいますが、電気窯でも薪窯と同じ味わいの焼き物が出来るのも事実です。

窯の違いではなく、薪窯で草木が燃える時にでる揮発性の成分が大切なのです。例えば水の成分は酸素と水素ですが、試みに蒸留水を飲んでみて下さい。味はありません、ミネラルというゴミが味のもとなのです。おいしい漬物にはゴミ入りの汚れた塩が必要です。精製された味の素入りの食卓塩では、決してうまみのある漬物は出来ません。草木が燃える時にでる揮発性の成分、いわばゴミが焼き物に味わいを付けているのです。電気窯でも十分にゴミを付加することが可能です。

ものが燃える時、酸素が必要です。従来の窯は温度を上げたくても温度が上がりませんでした。新素材が発明され、熱効率のよい窯が開発されました。科学の変化が窯焚きの世界を変えたという認識も必要でしょう。