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器の形

 

 湯呑、茶碗は器物として一番基本的な物です。日本では、古い時代から食べ物を盛ること、煮る事と言った人間にとって最も基本的な行為をお椀が担ってきました。お椀を作ることこそ陶芸の出発点であると思います。

 湯呑を例にとりますが、湯呑の各部分はおおまかに分ければ口縁、胴、腰、高台脇、高台に分類できます。よい湯呑の条件としては@各部分の厚さが均一であること、A薄くて軽くて手にすっぽり入って持ちやすく、口当たりが良いこと、Bお茶が冷めにくいこと等があげられます。これらの条件を考えればチューリップのような型が機能的に良い湯呑の型になります。

 戦前、民芸運動を唱えた柳宗悦は「用途を追求し、そこから出てきた機能美が一番美しい」と言っています。湯呑の形としては見た目に安心出来るかたち、言い換えれば使い易く見える形が大切です。

 とかく見落としがちですが、高台付近の美しさは大切な要素です。コップのように平らにしても良さそうですが、そうすると形に急所がなくなります。高台の形、高台脇のヘラ削り、ヘラ目など工夫して生き生きした生命感あふれる、ダイナミックな形を作りましょう。

 鑑賞陶器はただ美しいだけで良いかもしれないが、実用陶器としての湯呑は毎日手にとって使うものですから、ちょっとした不満、ちょっとした使いにくさのために、押し入れの段ボール箱の中にしまいぱなしになってしまいます。使う事を考えた上での制作が大切です