私のおすすめ博物館            「在日韓人歴史資料館」


誰にも知られていない、でも日本の現代史を知る上で貴重な資料が展示してある、そんな博物館を紹介します。日本の現代史の裏道散歩とでも言いましょうか、歴史的資料を見て,どのように判断するかは貴方次第です。

 1910年の日韓併合にともない生活の糧を求めて「在日」が日本に渡航した事情、当時の生活実態などを各種資料を収集しそれらを展示、公開することを通して、在日の歴史、ルーツを後世に伝えることを目的として韓国中央会館別館に2005年に設立されました。
外国人に対して閉鎖的な日本社会の中で朝鮮民族として多文化・共生を目指しています。
 韓国中央会館別館3階が受付で、2階が展示室になっています。展示室はエントランス左右に第一展示室(常設)と第二展示室(企画)があり、屋外テラスでは壁面に一世が渡航する前の、朝鮮南部の故郷の風景が描かれ甕が幾つか置かれています。1930年代の朝鮮市場(大阪,猪飼野)が再現され、1970年の大阪万博で韓国館に置かれた鐘(レプリカ)が展示されています。
 エントランスには日韓併合からの「日本への渡航」、「強制連行」、「関東大震災での受難」などについて写真、展示パネルでの説明がされています。第一展示室では実物の生活用具とジオラマを中心として「在日同胞の暮らし」などを、第二展示室では「解放後の生活」などをパネル、写真で時系列にそって解説しています。
 展示のスペースは広いとは言えませんがパネル、写真、実物資料など、たくさんの情報を効果的に展示し狭さを感じさせません。又、写真資料の効果を認識させられます。
 被支配民族から見た歴史、この在日韓人資料館は在日朝鮮人の歴史であると共に日本人の歴史でもある、日本を映し出す「カガミ」と言えます。
 日本社会が右傾化し、一部ファシズム的思想もった権力者により歴史が書き換えられつつある状況の中で、1904年以降の日本と朝鮮の関係を知る上で貴重な資料と言えるでしょう。
今一度,日本の歴史を振り返り,差別を生み出す社会構造について,また在日外国人との「共生」について、考えてみたら如何でしょうか。


                          (陶芸工房・くらふと坂陶主宰)

在日韓人歴史資料館
港区南麻布1−7−32 電話03−3457−1008
午前10時から午後4時まで 
(,火曜日 休館) 入館無料
東京メトロ南北線「麻布十番」駅下車2番出口から歩いて3分

 

                  
玉川大学キュレーターズ会報 第29号掲載  2008年7月25日発行
 



                          コラムに戻る